2018/04/15
経営者の方と決算書や月次試算表を見ながら会社の状況を話していると、経営者の方が???と納得されないことがあります。経営者の経営感覚と決算書にズレがあるのです。
こんなときは決算書が会社の状況を上手く反映していない、「決算書が歪んでいる」場合があります。これを放置すると経営者は会社の状況を誤解して見誤ることになります。この歪みの原因と解決法について書いてみます。
決算書の歪みとは
決算書は、会社の資産・負債を表示する貸借対照表と会社の1年間の売上・経費・もうけを表示する損益計算書で出来上がっています。会社の現在の実態をそのまま数字に反映して、経営の成績を判断するためのものです。
この決算書が実態と違う(あるべき資産や負債が載っていない・載っていても金額が多すぎる少なすぎる・経費が多すぎる少なすぎる・もうけが多すぎる少なすぎる)ことを決算書の歪みと言います。
歪みが生じる原因としては、経営者自らが粉飾決算を行っているような意図的なものを別として、経営者は気付いていないものがあります。よくあるものとして、『資産の減価償却費を税理士が税法に基づいて計算したことによる歪み』があります。
建物の耐用年数の長さが最大の原因
減価償却費とは、建物や設備など会社が長期間にわたって利用する資産を購入した場合に、購入した全額をそのときの費用とするのではなく、その金額をその資産に見合う耐用年数に案分して規則的に分けて費用としていく金額をいいます。
例えば、飲食店を始めるために簡易な店舗建物を1500万円費やして建てたとします。
① 税法基準での建物(店舗用・金属造り)の耐用年数は19年程度ですので、1年分の減価償却費は、約100万円ということになります。
② しかし、いまどきの飲食店の流行の回転スピードは早いです。建物や内装を数年おきに大きく変更しながら顧客に飽きられないよう経営努力を続けるのが実態です。とすれば、耐用年数は5年~10年程度と考え、1年分の減価償却費は、約150万円~300万円ということになります。
とすると、会社として「我が社は黒字です!」となるために必要な売上高は以下のように、10,000千円から13,333千円に変わります。言い方を変えると、また、5年~10年後に大改修して店舗リニューアルを図る同額程度の資金を貯めようと思ったら、13,333千円の売上が必要とも言えるでしょう。10,000千円の売上を目標にして達成していても、次回のリニューアル費用は貯まっていかないのです。
歪みを直してもらう
この、『資産の減価償却費を税理士が税法に基づいて計算したことによる歪み』を直すには、こんな方法が必要です。
① 決算書や試算表を作成するときの償却費を計算するため、その資産の実態的な耐用年数を事業の状況を加味して独自に見積もる
② ①の耐用年数にもとづいて計算された減価償却費を費用として計上してもらう
③ 法人税の計算で認められている耐用年数に基づいて計算された減価償却費と②の差額を申告書作成時に調整してもらう
これらは税理士に頼むとスムーズに処理が可能です。そもそも税理士としては手間を省くために、税法で決められている耐用年数を、そのまま決算書や試算表の計算時にも流用していたのです。それを別箇にすることは頼まれれば、今はパソコンが処理してくれるので、それ以上の作業ではありません。経営者にとって経営の羅針盤になる歪みのない決算書を作成するために、まずは頼んでみてください。