2018/04/15
平成27年の相続税増税に伴い、対策として生前贈与をする方が一気に増えています。(参照下図)
相続税がかかる前に、次世代に順次お金を移していこうという考え方が一層浸透していっているのだと思います。ただ、生前贈与は簡単に「親の通帳から子や孫の通帳へ口座振替する」だけでは、のちのち税務署からこれは贈与じゃない!と否定され相続対策が水の泡となるリスクがあります。そのあたりのリスクとその回避法について書いてみます。
生前贈与(暦年課税贈与)の増加傾向(国税庁HPより資料抜粋)
生前贈与は相続税対策に有効
生前贈与をすると、なぜ相続税対策になるのか?それは贈与税と相続税の税率差にあります。
贈与税の税率は以下の通りです。贈与した金額から税金のかからない基礎控除額(110万円)を引いた金額に次の税率を乗じます。
例えば、500万円を贈与すると、「500万円-110万円=390万円/390万円×15%-10万円=485,000円」、485,000円の贈与税がかかります。
贈与した方が相応の財産があるため、相続のときには相続税が遺産の30%かかるとすると、生前贈与せずに500万を相続の時に渡すとすると、「500万円×30%=150万円」、1,500,000円の相続税がかかります。
せっかく使い切らずに次世代に渡す500万円なら、先延ばしして高い相続税1,500,000円を差し引かれるよりも、今渡して安い贈与税485,000円を差し引かれた方が、渡す人ももらう人も気分が良い!というのが、生前贈与が相続税対策として利用されている理由です。
贈与を否定されると相続財産にもどってしまう
この相続税対策としての生前贈与が税務署に認めてもらえず、相続税がかかってしまう場合とは、こんなケースがあります。
・親が子名義の通帳を作り、子に知らせずに毎年100万円の積立を10年間していた場合
→親が亡くなったときに、この通帳残高1000万円は贈与済の子の財産とは認められず、親の遺産として1000万円に相続税がかかる
・祖父が孫名義の通帳を作り、孫が成人したら教えて渡そうと毎年100万円の積立を5年したところで亡くなった場合
→祖父が亡くなったときに、この通帳残高500万円は贈与済の孫の財産とは認められず、祖父の遺産として500万円に相続税がかかる
このような事態を回避するためには、贈与するとき(積み立てておくとき)に型を整えておくことが大切です。
文句を言われない生前贈与の条件
贈与契約については、民法でこう規定されています。
第549条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受託をすることによって、その効力を生ずる。
第550条 書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
税務署に生前贈与を認めてもらえない事態は、この贈与契約の民法上の条件を満たす証拠を揃えておくことで回避できます。ポイントは2点です。
① 与える意思と受託する意思を証拠に残すため、贈与契約書を作成する
② 贈与の履行がされたことを証拠に残すため、名義変更・所有権の移転をする
贈与契約書の作成の際に気を付けることは、以下の通りです。
・贈与する財産、金額を明確に書くこと
・署名は自署ですること
・未成年者がもらう際には親権者が代理人として署名する
渡す金額・渡す方法・申告までトータルに頼んでしまう
このように生前贈与する場合には、贈与契約書を証拠として残しておくのがベストです。インターネットを検索すれば、贈与契約書のひな形は手に入るのでそれを使うのも良いですが、それでは不安だという方もいると思います。そんな方は、税理士に頼むことをお勧めします。あとで税務署に贈与じゃない!と言われない型を作ってもらいましょう。
そして、せっかく贈与契約書の作成を頼むのであれば、「いくら生前贈与するのが良いのか?」「どんな方法で渡すのが良いのか?」、そして贈与税申告までトータルに頼んでしまいましょう。
「いくら贈与するのが良いのか?」は、相続税の試算をしてみる必要があります。生前贈与が相続税の対策に有効なのは、先に書いたように2つの税金の税率差にあるので、自分が亡くなったときの相続税の税率を知ることで生前贈与はいくらにするのがベストなのかが分かるのです。
「どんな方法で渡すのが良いのか?」についても、” 一括で贈与はするけど、無駄使いできないように使えるのは少しずつにしたい ”などの渡す側の様々な気持ちを実現できる制度もあるので、そんな方法についてもアイデアをもらえます。
生前贈与は相続税を軽減するのにシンプルで効果のある方法です。トータルな検討を頼んでみましょう。
では、贈与する金額をいくらにしたら良いのか?については、こちら!