2018/04/15
遺言書の作成を考えている方が増えています。遺産分割を巡って、その多少に関わらず、残された遺族が争いになることが少なくないので、その防止に遺言書は有効です。意外と遺言書が見つかると、「おとうさんが、こう書いたんだから仕方がない・・」と丸く収まるものです。
ただ、せっかく作った遺言書に問題がある場合は別です。それが原因となって、遺族が争うことに繋がります。そうなったら後悔しようにもできません。そこで気をつけるべきポイントを書いてみます。
遺言書とは
遺言書は3種類
遺言書には、3種類あります。
1.自筆証書遺言・・遺言者本人だけで作成。最も簡単な遺言書。
2.公正証書遺言・・公証役場で公正証書にして作成。確実に遺言書を残したいときに利用される。
3.秘密証書遺言・・公証役場で手続きをするが、遺言内容は公証人も知らずに作成できるので、亡くなるまで誰にも秘密にしたいときに利用される。利用頻度は少ない。
3種類の特徴点
これらの遺言書の特徴点などを簡単にまとめると、こんな感じです。
どうせ作成するなら公正証書遺言で
お客様が遺言作成を検討していたら、公正証書遺言での作成をお勧めしています。
自筆証書遺言は、自分1人で作成できお手軽な点が良いのですが、他方で、遺族の方が見つけられなかったり・隠されてしまったりするリスクと、その遺言自体が本当に本人が書いたものなのか?と争いの種になるリスクがあるからです。
遺言書の作成手順と注意点
作成の手順
公正証書遺言は、こんな流れで作成していきます。
① 遺言の内容を決める
② 決まった内容を事前に公証役場に送る
③ 公証役場が指定した日に、遺言者と証人2名で向かう
④ 公証人が3人に内容を読み上げ、問題なければ署名・押印
⑤ 公正証書遺言が完成し、原本を役場・謄本を遺言者がもらう
あとで問題になる点
公正証書遺言は、遺言のなかでは最もリスクの少ない形式です。それでも、遺族の間で問題になる点が主に2点あります。
一つ目が、遺言書を作成した時点での本人の意思能力が本当にあったのか?という点です。例えば、遺言の内容に納得していない遺族である次男が、亡くなった父は公証役場に行った当時には、もう認知症が進んでいて内容がはっきり分かっておらず、長男の言う通りの遺言を作っただけだ!という争いです。
もし、その通りであれば、公正証書遺言の効力は無効となってしまいます。
二つ目が、遺言書の内容が遺留分(遺言によっても処分できない相続人が必ずもらえる財産持分)を侵害しているので遺留分減殺請求という訴えがされてしまうという点です。例えば、遺産総額が4億円の場合に、公正証書遺言の内容が、子供2人の遺族のうち一方に全額を相続させるとのものであれば、子供の遺留分(総額の1/4)である1億円を渡せという訴えがされるという争いです。
もし、この訴えがされれば、公正証書遺言の内容は覆されることになってしまいます。
公正証書遺言は、本人と公証人とで直接作成することも可能です。ただ、リスクを回避するため、遺言の内容を作成していく作業には専門家にも協力してもらうべきです。
ただ、遺言作成のお手伝いをする専門家としては、弁護士・司法書士・行政書士そして税理士など色々考えられますが、誰に頼んだらいいのか?よく分からないという話を聞きます。遺言業務での税理士の特異な守備範囲とそれ以外を書いてみます。
遺言業務で税理士の守備範囲
守備範囲外
・遺言を作成する時点で、既に家族の中で紛争が予測される・・税理士ではなく弁護士や司法書士に相談することで紛争予防や解決についてもアドバイスをもらうことが可能
・遺産が少なく税金の心配がなく、かつ遺産分割の内容も既に決まっている・・税理士ではなく行政書士に相談することでスムーズで費用も押さえることが可能
守備範囲内
・遺産が多く税金の心配がある方については、遺言内容の検討過程で、相続税の試算もセットで行えるので、遺言が実現した場合の各人の相続税負担まで考慮に入れた検討や全体として相続税を圧縮する遺言内容を検討も可能
・財産の評価を行うので、遺留分を侵害するリスクがあるか否かの判断ができ、侵害しないような内容に変更することが可能
専門家を上手く使い分ける!
このような守備範囲の特性がありますが、そういっても一概に誰に頼むかを決めることは難しいです。どんな円満な家族でも紛争のリスクが皆無ではありません。
そこで、複数の専門家にチームを組んでもらって公正証書遺言の作成を手伝ってもらうのがベストだと考えます。最初に頼んだ士業の方だけでなく、その方に他の士業の方も紹介してもらったりしながら、それぞれの専門性を注ぎ込んで、よりよい遺言を作成してもらいましょう。
追記:弁護士とアライアンスを組んでいるため、遺言作成の業務をする際に税金面からのサポートをさせていただくことが多くあります。また、遺言作成をお客様から受託した際には積極的に弁護士等にも関わってもらっています。