2018/04/15
1,000万円の資本金ではじめた会社も色々な時期を乗り越えながら、経営者の経営手腕を発揮して利益を重ねて何十年も続いていると会社の財産価値は時価1億円超ということも珍しいことではありません。 このような会社の経営者は、毎年の法人税や消費税のことだけではなく、将来の相続税にも意識を向けることが必要となってきます。このあたりのことを書いてみます。
オーナー株式と相続税
大企業を除くと、オーナー社長一人が大半の株式を所有しているケースが多いです。オーナー社長が60歳を過ぎてくると、後継者の目途も社内で固まりはじめて、その方の役職もついてくる頃でしょう。そろそろ株式も持たせようか?そんなときに、突然オーナー社長が亡くなったらどうなるか。
その亡くなったときに、オーナー社長が所有している預金や不動産などの個人資産に、大半のオーナー株式を時価評価した金額を合算して相続税がかかることになります。
例えば、オーナー社長の個人資産が1億円・オーナー株式が2億円・家族は子供2名だったとすると・・相続税は最大8,600万円もかかります。個人資産が預金などであれば、それを相続税の納税に使えばなんとかなりますが、自宅などの不動産だった場合には売却して納税資金を作ったり、それでもダメならオーナー株式を一部売却して経営権を他人に渡さざるを得ない事態にもなりかねません。
相続税負担を下げる2つの視点
このような事態を避けるため、オーナー社長は可能な限りオーナー株式の相続税負担を下げる方法を検討すべきです。その方法として2つの視点があります。この2つの視点を掛けあわせることで相続税負担を大きく圧縮することが可能になります。
① 相続前になるべく多く移してしまう
1つ目は、オーナー社長が亡くなったときに全ての株式を後継者が受け取るのではなく、生前に一部を受け継ぐようにすることです。さきほどの2億円の価値のオーナー株式が合計1,000株だとしたら、後継者が決まった段階で毎年10株ずつでも贈与してしまうのです。そのとき贈与税は少しかかりますが、まとめてすべてに相続税がかかるよりは低負担となります。
ポイントは、毎年少しずつ贈与することです。1000株すべてをまとめて贈与すると贈与税も高税率になってしまうためです。長期スパンをかけて毎年小分けに贈与することで相続税より低率な贈与税負担で済むのです。
② 株式の評価額を下げる工夫をする
2つ目は、オーナー株式の評価額そのものを下げる工夫をすることです。さきほどの2億円の株式(1,000株)は、1株200,000円です。この評価額は、会社の資産や負債・営業成績や配当状況・会社規模等により計算されるものです。そこで、この計算を見越して評価額が下がるように資産などを組み換えていく工夫をするのです。例えば、この工夫によって1株の評価額が200,000円から150,000円になれば、それだけ相続税は安くなります。
ポイントは、工夫する準備期間を長期的にとることです。株式の評価の計算は、会社の数年間の数字を基に計算されますので長期スパンで工夫をできれば、その分評価額の圧縮もより効果的になるのです。
まずは相続税を試算→長期スパンでスケジュールを!
相続税負担を下げる2つの視点に共通するポイントが、” 長期スパンをかけること “です。まずは、オーナー社長自身にもしもがあった場合の相続税の試算をしてもらいましょう。個人資産とオーナー株式の財産評価してもらいます。それを基に、後継予定者にオーナー株式をどう移していくのがベストなのか?長期スパンのスケジュールを組んでもらいます。いつもしもがあっても、後継者が会社を守っていける事業承継の準備をしましょう。