2018/04/15
事業の業績自体は横ばいでも資金繰り改善を図る方法はないのか?この方法を考える際の基本思考については、こちら!で書きました。これを踏まえて、事業の中心にある ” お客様にモノやサービスを売る場面 ” で出来る資金繰り改善の具体的な手法について書いてみます。
売上の場面で出来る具体的な改善の手法
売上の場面では、基本思考の「資金をできるだけ早く先に、1円でも多く貰える方法がないか考える」を念頭において探っていきます。 これら検討してみるべき手法です。
1.お客様と売上金の受取時期の交渉をする際は、シビアにできるかぎり早める
とくに新規のお客様と契約を結ぶ際、ここは勝負所と割り切って鬼になりましょう。末締めの翌月・翌々月など業界ごとの慣習あると思いますが、それに最初から縛られる必要はありません。又、取引先のお付き合いの初めに「うちの会社はこうなっていて・・」と言ってしまえば、意外と1か月早めることが出来るケースも見ます。一度決まった取り決めを変更するのは大変。最初が肝心です。
建築業界など、受取時期がずいぶん先になる場合には、手付金・前受金の金額ができるだけ多くなるよう鬼になりましょう。
2.請求書をすぐに出す
多忙な方は請求書の送付が遅くなりがちです。しかし、末締めの翌月末払いの取引先との売上であったとしたら、請求書の到達が31日か1日遅れて翌月に回されてしまうかで、売上金の受け取りが1か月も先延ばしになってしまいます。請求書は貯めずに、即日作成→送付を基本にしましょう。
3.1日入金遅れたら、すぐ催促+遅延利息をとる
送った請求書の期日に入金がなかったら、すぐに催促して、入金まで時間がかかりそうであればその分の利息をとる体制を作ります。入金されたかどうかその都度、銀行記帳に行くのが面倒であれば、ネットバンキングに登録してネット上で分かるようにします。
住人の家賃遅れが目立つ不動産オーナーに、この方法を採用してもらったところ、3カ月もすると、ほぼすべての住人から月末にぴたっと家賃が入金がされたことがあり驚きました。
4. 早い顧客に割引・現金なら割引
取り決めよりも早く前倒しされた入金や売上げの場での現金入金など、早い入金が多くなるよう割引などの特典を考えていきましょう。喫茶店でよくあるコーヒーチケットは、この入金を早くする仕組みの進化版です。渡していない10杯分のコーヒーの売上金を先に入金できています。
資金繰りの改善にどれほどインパクトあるか?
では、これらの手法でどれほど資金繰りが改善されるのか。具体例を見てみます。
まず、当期4月からの毎月の損益がこんな会社があったとします。毎月売上が伸び、3か月で163万円の利益となっています。
そして、取引先との契約上、売上の入金はすべて末締めの翌々月の入金で仕入原価はその月で支払っています。資金繰り表を作成するとこのようになります。最後の3行を見てください。6月1日に100万円あった預金が30日には62万減って39万円になる計算です。
そこで、お客様との売上金の受取時期について交渉に入ります。そう簡単ではないと思いますが、もし仮に受取時期が翌々月から翌月にと、ひと月前倒しできたとするとこうなります。
最後の3行を見てください。資金繰りは-62万円から+19万円に改善します。このような改善の成果が予測されるのであれば、少々のストレスがあっても取り組むべき改善の手法だとわかります。
インパクトを試算→改善の実現への目標を設定する
このように改善の手法を検討する際には、その手法が現実化したときにどれほど資金繰りが改善するのか、そのインパクトを資金繰り表で具体的に計算してみることが大切です。
特に売上の場面での資金繰り改善の手法は、大事なお客様との関係の変更を必要とするので、慎重になります。具体的に計算してみると、手法を実現するためにはお客様との関係でかなりストレスかかるのに改善には結びつかなかったり、かかるストレス以上に改善の成果は大きいものであったりと、優劣が一目瞭然で取り組むべき手法がハッキリします。
資金繰りに悩んでいる方は、改善の手法にどんなものがあるのか?それをしたらどれほど改善するのか?具体的な検討を税理士に頼んでみましょう。
~参考~
※上記例は売上が続伸していますが、売上も原価もあまり変動していない会社については、売上金の受取時期を交渉して1か月前倒ししても、それほど資金繰りの改善には繋がりません。
この会社の損益はこんな感じです。売上・原価ともに変動せず安定しています。
この会社が、”売上は翌々月入金で仕入原価は当月支払い” である場合の資金繰り表はこんな感じです。
資金繰りを改善しようと、大事な取引先とシビアに交渉した結果、売上金を翌月入金にしてもらったら、資金繰りはこうなります。
最後の3行を比較してください。-6万円が-1万円になるだけで改善の成果としては乏しいです。この程度の成果のために、大事なお客様とシビアに交渉することは慎重になるべきとも思います。このように会社の業績によって、取り組むべき改善の手法も変わってくるのです。この検証作業を税理士に頼むのです。