2018/04/15
建設会社を長く続けてこられて社長から、商売の規模も小さくなってきたし、そろそろ会社を閉じて、70才過ぎたら好きな大工仕事を個人事業で自由にやりたい・・と言われることがありました。生涯やりたい仕事があるなんて羨ましく、いい話だなと思いました。そんな「会社を閉じて→個人事業へ」の移行で注意するポイントなど書いてみます。
個人事業に戻す手続き
個人事業に戻す手続きは、こんな流れです。法人を作ったときを思い出してください。法人設立の登記をしたり個人の仕事道具や車を法人に移したと思います。その逆の作業です。
① 会社の所有する資産を個人へ売却する・・仕事道具やコピー機、会社所有のトラックなどは個人事業で引き続き使いますので、時価で売却します。
② 会社を解散・清算する・・解散する旨の登記を法務局に、会社に残った財産の清算結果を税務署に申告します。
③ 個人事業を開業する・・もう一度、個人で仕事やっていきますと税務署へ届出をします。取引先にも知らせていきます。
メリット・デメリット
個人事業に戻すのは、法人運営の面倒な手続きは、そろそろやめたいという気持ちからだと思いますが、それ以外のメリット・デメリットとして、代表的なものはこんなところでしょうか。この点も、法人設立するときに検討したことの逆と考えると分かりやすいと思います。
メリット
・事業規模が縮小し利益が少なくなっている場合には、個人事業の方が税金が安いケースがある
・社会保険料の負担が必要なくなる場合があり手取り収入が増えるケースがある
・法人の税務申告に比べて、個人事業では自分で慣れてしまえば出来るので税理士へのコストが圧縮できる
デメリット
・会社形態をとらないと取引をしてくれないケースがある
・許認可が必要な業種で、再取得のハードルが高いケースがある
・思いのほか利益がとれてしまった場合に、個人事業の方が税金が高いケースがある
・法人時代の赤字の欠損金(その分だけ今後利益が出ても税金がかからないという特権)を個人事業に引き継げない
・法人での役員報酬が少なかった場合には、逆に社会保険料の負担が多くなるケースもある
充分な移行期間があるとよい
上記のデメリットが生じない、スムーズな個人事業への移行を可能にするには、事業の状況で起こり得る事態を整理した上で移行期間を設けて進めていくと良いです。
例えば、「あと3期過ぎたら会社を閉じて個人事業に戻す」と決めて、取引先に少しずつ周知させていく・許認可の要件を充足するよう準備する・その期間内で会社の欠損金を無駄なく使え切るように仕組んでいく・個人事業になったときに最初から自分で確定申告できるように勉強しておく、など進めていくのです。スムーズな移行がきっと実現できます。
このスケジュール策定のサポートも今まで会社をずっと見てきた税理士に頼んでみましょう。