2018/04/15
澤口事務所では、この夏の時期、相続税の試算の仕事がぐっと増えます。それは、以前から試算をしている方の金額を今年の現状を踏まえて再計算して税額をお伝えする必要があるからです。
相続税の試算は、1度やってそのままにしてしまうと、せっかくの効果が半減してしまいます。出来れば毎年、この夏の時期、再計算してもらうことをお勧めしています。そのあたりのこと書いてみます。
相続税の試算ってどんなものか
相続税とは、シンプルに言うと「亡くなった人が、亡くなるその瞬間に保有していた全ての財産を基準にその財産を相続した人に課税される税金」です。そして、その税金がいくらぐらいになるか?を試しに計算してみようというのが「相続税の試算」です。
例えば、今亡くなったとしたら・・と仮定するなら、今日の預金通帳の残高・今日の不動産の評価額・今日の株式の評価額・今日の借入金の残高などを積み上げて合算していき、その合計額に税率を乗じて計算するのです。
少し時間のかかる作業ではありますが、この計算をすることで親の亡くなった時に自分が、とか自分が亡くなった時に子が、相続税を支払うためにどのくらい用意しておかなければいけないのかが分かります。
毎年、再計算してもらうべき理由
この試算を数年前に1度してもらって、そのとき計算された税額を自分にもしものことがあったら相続税はこの金額だと、ずっとイメージし続けている方がときどきいます。
確かに、1度も試算をしないよりは良いのですが、ベストは「数年前の計算で出た税金額」ではなく、毎年、「再計算してもらい最新の税金額」をイメージするべきです。なぜなら、計算される税金の試算額は、色々な原因によって増加したり減少したり変化しているからです。
イメージしていた相続税の金額と、実際にその時がきて納めることになった金額が大きく違ってしまうことがあるのです。このようなこと、税金の金額が変化する原因の主なものは以下の通りです。
1.預貯金の金額の変化
数年経てば預貯金の残高も変わります。大きな出費や入金がなくても、普段通り生活しているだけでも、バリバリ働く現役世代であれば増えていくでしょうし、リタイア後は年金+貯金使っていけば減っていきます。
預貯金の金額が増えれば相続税の試算額は増えますし、減れば相続税の試算額も減っていきます。
2.借入金の残高の変化
借入金の残高も変わります。予定通りローンの返済が進めば、毎年残高は少なくなっていきます。他方、新たな借入をする場合もあるでしょう。
借入金の残高が減れば相続税の試算額は増えますし、新たな借入で増えれば相続税の試算額は減ります。
3.財産の購入・売却による変化
新たに財産を購入したり売却したりすれば、財産の総額が変わります。
財産の総額が増えれば相続税の試算額は増えますし、逆であれば財産の総額が減り相続税の試算額は減ります。
4.家族関係の変化
家族関係が変化すると相続税の試算額も変わります。
子供が増えるなど法定相続人が増えれば相続税の試算額は減りますし、他方、配偶者が亡くなったり相続人が減れば相続税の試算額は増えます。又、生活や事業の状況で、例えば、子と同居を始めたりすると、これも相続税の試算額に影響を及ぼす場合があります。
5.不動産の評価額の変化
保有している不動産の評価額も毎年変わっていきます。土地については、毎年7月に国税庁より路線価が発表され、土地の評価が変わります。今月初めに27年の路線価が発表されました。
例えば、事務所のある土地は、26年の路線価から1㎡あたり5千円、評価額が値上がりしました。つまり同じ土地をただ持ち続けていただけも、評価額は増加し、相続税の試算額は増えることになります。
平成26年・横浜市港北区高田西の路線価
平成27年・横浜市港北区高田西の路線価
参考:国税庁-路線価図
6.税制改正の影響による変化
平成27年には、相続税の大きな改正がありました。この改正は多くの場合で増税となる改正でした。これにより以前にした相続税の試算額は、最新の試算をしてみると増えることが多いです。
今後も改正があれば、その影響を受けて相続税の試算額は変化します。
継続的に毎年試算してもらう
以上のような変化を毎年のように加味して再計算して、最新の相続税の試算額を掴んでおくと、イメージして準備しておく相続税と実際にそのときがきて納税する相続税のギャップを縮めることができます。
これにより遺族が相続税の納税に苦労したり、生前にもう必要ない節税策をやったりという失敗をせずに済みます。又、税理士としては1度試算をしていますので、再度の試算は数字を入れ替えるだけですので、実は意外と時間がかかりません。
是非、この新しい路線価が発表される7月に、まずは以前に1度相続税の試算を頼んだ税理士に最新の試算額の計算を頼んでみましょう。