2018/04/15
資産家の方の相続対策のお手伝いをしていると、人それぞれ色々な想いを聞くことになります。たとえば・・
「自分の亡くなった後、私は○○家の長男で子供はいないので、最終的には○○家の財産なので全てを自分の弟に相続したいと思っています。ただ、妻は本当に良くしてくれているので、妻に相続させられないだろうか。ただ妻に相続した場合、妻の亡くなったそのあとで、財産が次は妻の兄弟に相続されて、○○家から離れてしまうなら、諦めて最初から自分の弟に渡す以外ないのだが・・」というものでした。
こんな家族への想いを実現させる手法としての信託制度について書いてみます。
信託制度とは
信託とは、財産を持っている人(委託者)が信託契約などによって、信頼できる人(受託者)に対して、その財産を移転し、受託者はその契約に従ってその財産を管理処分するという制度です。
最近、利用が急速に進んできているものです。
この信託制度の特徴のひとつに、委託者が亡くなった後でも受託者は契約を守り続ける。すなわち、自分が亡くなったそのあとでも信託契約が生き続け、財産の行き先を指定できるというものがあります。この点が、先ほどの想いを実現させる効果を発揮します。
信託制度を利用すれば、自分が亡くなった後まで想いを実現できる
先ほどの例でいくと、信託契約を使って、自分が亡くなったら財産を妻に相続させ、妻が亡くなったときに妻の兄弟やおいめいに、そのまま相続されそうなところ、○○家の兄弟やおいめいに戻して相続させることが可能となります。つまり夫である自分の意思によって、自分が亡くなった後の財産の移動を次の次まで決めることができるのです。
従来は、このような場合に自分の生前に妻に「相続した財産は○○家の弟に相続する」などの遺言を書いてもらい、○○家以外にいかないようにとの想いを担保していましたが、自分が亡くなった後に妻が遺言を書き直してしまう可能性を残していました。そのことを恐れて、妻に財産を相続させられないこともあったようです。
この自分が亡くなった後の財産の移動を決めることができるという効果を使える場面としてよく言われるのが「自分の財産は後妻に相続させるが、後妻が亡くなった後は後妻の子ではなく前妻の子に相続させたい」というケースが教科書的には挙げられています。私はまだこのような方に実際にお会いしたことが有りませんが・・
信託契約書を作れる専門家を探してもらう
このように信託制度の活用により、この事例に限らず、色々な想いを形にすることが大胆に可能となっています。他方で、できることが増えた分、複雑化してトラブルに陥ってしまうことも少なからず懸念されています。
まだまだ幅広く浸透し利用されている制度ではありませんので、例えば、リスクを説明しながら信託契約書を作成してくれる専門家も限られているのが現状です。信託制度を検討しようかと思ったら、頼れる信託制度の専門家を探す必要があります。税理士にも一緒に取り組んでもらいましょう。